日本がワールドカップで勝てないのは、世界の強豪国の仲間入りできないのは、日本のサッカーの歴史が浅いから!
などと言われるのを聞いたことがありますよねぇ。
それは本当なのでしょうか?日本が弱いのは歴史が浅いから?
今回は、日本のサッカーの歴史を振り返り、浅いのかどうか、浅いから弱いのか、ということを考えてみたいと思います。
目次
サッカーの歴史を振り返る
サッカーの起源だとか、各国のサッカーの始まりなんかを事細かに振り返ると、
紀元前の中国だとか、イタリアのカルチョだの、もの凄い昔まで調べなければならなくなるので、
早速ですが割愛させていただきますm(__)m
ここでは、競技としてのサッカーの始まりや組織的な活動を中心として、
また、日本を含む各国のサッカー事情などについて振り返ってみたいと思います。
サッカーが、現在の競技ルールで行われるようになったのは、
1863年のFA(イングランドサッカー協会/The Football Association)の設立がきっかけとなります。
この1863年以降のサッカーの歴史を、年表にして振り返ってみましょう。
なお、記載するのは協会/連盟設立、カップ戦、リーグ戦などが開始された年とします。
協会・連盟設立
- 1863年 FA(イングランド)
- 1889年 オランダサッカー協会
- 1893年 アルゼンチンサッカー協会
- 1898年 イタリアサッカー連盟
- 1900年 ドイツサッカー連盟
- 1913年 スペインサッカー連盟
- 1913年 アメリカ合衆国サッカー連盟
- 1914年 ブラジルサッカー連盟
- 1919年 フランスサッカー連盟
- 1921年 日本サッカー協会
- 1927年 メキシコサッカー連盟
それぞれの国でサッカー大会等の活動を統括する組織が協会、連盟。
1863年にイングランドで組織されて以降、世界の各国、強豪国で組織されていくわけですね。
FAが設立された1863年は、日本では幕末で薩英戦争や下関戦争が起こった年です。
日本サッカー協会が設立された1921年は、大正10年で、FA設立の58年後になります。
カップ戦
- 1871年 FAカップ(イングランド)
- 1899年 KNVBカップ(オランダ)
- 1903年 スペイン国王杯(スペイン)
- 1907年 コパ・メヒコ(メキシコ)
- 1914年 USオープンカップ(アメリカ)
- 1917年 フランスカップ(フランス)
- 1921年 天皇杯(日本)
- 1922年 コッパ・イタリア(イタリア)
- 1935年 ドイツカップ(ドイツ)
- 1969年 コパ・アルヘンティーナ(アルゼンチン)
- 1989年 コパ・ド・ブラジル(ブラジル)
日本の天皇杯に該当する各国のカップ戦です。
天皇杯は日本サッカー協会が設立された大正10年に初開催されています。
FAカップの50年後、スペイン国王杯の18年後、コッパ・イタリアやドイツカップよりも早く開催されたわけですね。
天皇杯の始まった年と各国のカップ戦と比較したときには、歴史が浅いことはないですよね。
南米のアルゼンチン、ブラジルなどは、独自のサッカー活動がされてきたので、
天皇杯にあたるカップ戦が行われたのは1970年頃からということになります。
リーグ戦(国際大会も加えて)
- 1888年 フットボール・リーグ(イングランド)
- 1894年 フランス選手権(フランス)
- 1897年 エールディビジ(オランダ)
- 1897年 セリエA(イタリア)
- 1900年 オリンピックサッカー(世界)
- 1902年 ドイツ・サッカー選手権(ドイツ)
- 1929年 プリメーラ・ディビジョン(スペイン)
- 1930年 FIFAワールドカップ(世界)
- 1932年 リーグ・アン(フランス)
- 1943年 リーガMX(メキシコ)
- 1965年 日本サッカーリーグ(日本)
- 1967年 北米サッカーリーグ(アメリカ)
- 1991年 Jリーグ(日本)
- 1993年 MLS(アメリカ)
1888年(明治21年)にイングランドで国内リーグが始まって以降、各国でリーグ戦が整備されていきます。
日本で国内リーグが始まったのは、Jリーグの前身である日本サッカーリーグ(JSL)で、
イングランドのリーグに遅れること77年後の1965年になります。
プロサッカーリーグということであれば、1991年にJリーグが開幕しますので、
日本は100年以上遅れているということになります。
これらのように、世界のサッカーの歴史を、協会/連盟、国内カップ戦、国内リーグ戦の設立、開催された年を振り返ってみると、
日本のサッカーは、イングランドと比べたときには50~100年遅いということになります。
しかし、イングランドは、世界中の国々の中でも極端に早いので(サッカー発祥の国、サッカーの母国と言われる所以)、イングランド以外の国も、多少の遅れはあるわけです。
日本サッカーをイタリア、ドイツ、スペインなどと比較した場合には、
だいたい10~20年くらい遅いということになります。
イングランドに比べるとイタリアやドイツ、スペインも遅いのです。
つまり、サッカーの強豪国、先進国?などと言われる国と日本を比較したときには、
だいたい20年ほどのタイムラグがあり、サッカーが始まったのが少し遅いと言えると思います。
しかし、日本のサッカーも、協会設立から約100年、カップ戦も約100年、国内リーグ戦も約50年の歴史があります。
比較するものではないかもしれませんが、今回モデルとしたサッカーの強豪国ではなく、欧州、南米以外の国と比較すると、
日本よりも歴史の浅い国は多くあり、それと比較すると歴史も実績もあるということになります。
日本はサッカーの歴史が浅いというイメージがあるかもしれませんが、
欧州各国と比較すると若干浅いと言えるかもしれませんが、
こうしてみてみると、思っていたよりも長い歴史があるということがわかると思います。
日本サッカーも約100年の実績がありますので、歴史が浅いことはないんですよね。
国際大会の歴史の比較
サッカーの歴史を国際大会の実績からみてみましょう。
国際大会のうち、オリンピックとワールドカップを振り返ってみたいともいます。
オリンピック・サッカー競技
夏季オリンピックは1896年に第1回が開催されますが、正式種目としてサッカー競技は行われませんでした。
オリンピックの参加国も14か国のみと、現在と比べると小さな大会だったんですね。
サッカー競技は第2回の1900年から正式種目になります。
このときのサッカー競技に参加した国はイギリス、フランス、ベルギーの3か国のみです。
イギリス(←イングランドではありません)が金メダルを獲得しますが、行われた試合は2試合のみ。
現在までに行われたオリンピックのサッカー競技は、
2016年のリオ・オリンピックまでで26回開催されていることになります。
サッカーの強豪国と日本の実績を比較して、日本のサッカーの歴史が浅いのかどうか、みてみましょう。
イギリス
- 初出場:1900年
- 出回数:10回
- 成 績:金3/銀0/銅0/4位1
フランス
- 初出場:1900年
- 出回数:12回
- 成 績:金1/銀1/銅0/4位0
アメリカ
- 初出場:1904年
- 出回数:14回
- 成 績:金0/銀1/銅1/4位1
- ※銀1銅1は1904年に参加国3チームのうち2チームが米国
オランダ
- 初出場:1908年
- 出回数:8回
- 成 績:金0/銀0/銅3/4位1
イタリア
- 初出場:1912年
- 出回数:15回
- 成 績:金1/銀0/銅2/4位4
ドイツ
- 初出場:1912年
- 出回数:9回
- 成 績:金0/銀1/銅1/4位1
※東ドイツ
- 初出場:1964年
- 出回数:4回
- 成 績:金1/銀1/銅2/4位0
スペイン
- 初出場:1920年
- 出回数:10回
- 成 績:金1/銀2/銅0/4位0
アルゼンチン
- 初出場:1928年
- 出回数:8回
- 成 績:金2/銀2/銅0/4位0
メキシコ
- 初出場:1928年
- 出回数:11回
- 成 績:金1/銀0/銅0/4位1
日本
- 初出場:1936年
- 出回数:10回
- 成 績:金0/銀0/銅1/4位1
ブラジル
- 初出場:1952年
- 出回数:13回
- 成 績:金1/銀3/銅2/4位1
オリンピックのサッカー競技が、現在の1次リーグを行った後ノックアウトシステムとなったのは、
1964年の東京オリンピックからで、
それ以前はリーグ戦は行わず1発勝負のノックアウト方式が多かったようです。
日本代表は1936年(昭和11年)の第8回大会に初出場します。
オリンピックのサッカー競技の出場は、チャイニーズ・タイペイと同じくアジア初となります。
初出場の日本は、初戦で優勝候補スウェーデンを破るジャイアント・キリングを起こし(「ベルリンの奇跡」と言われます)、
日本サッカー史に、また、アジアサッカー史に、オリンピック初勝利をもたらしました。
余談になるかもしれませんが、日本サッカーのオリンピックでの実績は、初出場、出場回数、成績でみたときに、アジアでNo.1です。
サッカーの強豪国と比較しても、成績では若干劣るかもしれませんが、出場回数やなどは遜色ないと思います。
オリンピックのサッカー競技をみたときに、日本サッカーの歴史は浅い!とは限らないと思います。
ワールドカップ
次にワールドカップについてみてみましょう。
協会、連盟設立の古い順に記載してみます。
ワールドカップの第1回は1930年(昭和5年)に開催され、
2018年のロシア大会までに21回開催されています。
イギリス
- 初出場:1950年
- 出場回数:15回
- 成 績:優1/準0/3位0/4位2
- 決勝T:B8~6回/B16~2回
- 勝 率:0.420
オランダ
- 初出場:1934年
- 出場回数:10回
- 成 績:優0/準3/3位1/4位1
- 決勝T:B8~1回/B16~2回
- 勝 率:0.540
アルゼンチン
- 初出場:1930年
- 出場回数:17回
- 成 績:優2/準3/3位0/4位0
- 決勝T:B8~4回/B16~2回
- 勝 率:0.530
イタリア
- 初出場:1934年
- 出場回数:18回
- 成 績:優4/準2/3位1/4位1
- 決勝T:B8~1回/B16~2回
- 勝 率:0.542
ドイツ
- 初出場:1934年
- 出場回数:19回
- 成 績:優4/準4/3位4/4位1
- 決勝T:B8~3回/B16~1回
- 勝 率:0.614
スペイン
- 初出場:1934年
- 出場回数:15回
- 成 績:優1/準0/3位0/4位1
- 決勝T:B8~4回/B16~4回
- 勝 率:0.476
アメリカ
- 初出場:1930年
- 出場回数:10回
- 成 績:優0/準0/3位1/4位0
- 決勝T:B8~1回/B16~3回
- 勝 率:0.242
ブラジル
- 初出場:1930年
- 出場回数:21回
- 成 績:優5/準2/3位2/4位2
- 決勝T:B8~1回/B16~3回
- 勝 率:0.669
フランス
- 初出場:1930年
- 出場回数:15回
- 成 績:優2/準1/3位2/4位1
- 決勝T:B8~2回/B16~0回
- 勝 率:0.515
日本
- 初出場:1998年
- 出場回数:6回
- 成 績:優0/準0/3位0/4位0
- 決勝T:B8~0回/B16~3回
- 勝 率:0.238
メキシコ
- 初出場:1930年
- 出場回数:16回
- 成 績:優0/準0/3位0/4位0
- 決勝T:B8~2回/B16~7回
- 勝 率:0.280
ワールドカップサッカーを振り返ってみると、日本サッカーと世界の強豪国との実績や歴史の差が明確にわかると思います。
世界の強豪国はもちろんですが、
日本と同じレベルにあるのかなぁと思っていたアメリカやメキシコも、
ワールドカップに出場したのは第1回からで、出場回数も10回を超えます。
我らが日本は、これらの強豪国に比べ、出場するのが約70年遅くて、出場回数もアメリカの約半分、メキシコの1/3程度なんですね。
勝率では、アメリカやメキシコと同じくらいですけど、世界の強豪国は5割を超える勝率です。
ここでは、サッカーの歴史を振り返ってみるために、国際大会の実績や歴史をみてみましたが、
オリンピックのサッカーでは、成績での多少の差があったとしても、出場の実績などは遜色ありませんでしたが、
ワールドカップでは、日本代表は出場の実績、成績などをみると、歴史が浅いと言えるのではないでしょうか。
つまり、日本サッカーは、約100年前に組織されたので、サッカーの歴史はそれなりにあるんですけど、
ワールドカップでの歴史はまだまだ浅いということです。
これまでの振り返りをまとめてみますと、
- 協会・連盟の設立は先進国から約10~20年遅い
- カップ戦は約100年の歴史があり先進国と差はない
- ただ、国内リーグは30~70年遅れている
- プロリーグにあたっては100年遅れている
- オリンピックはまぁまぁ出場している
- ワールドカップの実績が不足している
と、言えるのではないでしょうか。
歴史が浅いと弱いのか
再度、言いますけど、日本サッカーは100年の歴史があります。
サッカーの強豪国と比較すると、若干の遅れがありますけど、決して歴史が浅いわけではありません。
しかし、ワールドカップでの実績をみてみると、歴史の若干の遅れとは思えない差を感じます。
ワールドカップでの勝率が同程度だったアメリカやメキシコのことも含めて考えてみると、
サッカーが強いか弱いのかということに、サッカーの歴史が影響しているかと疑問をもってしまいます。
サッカーが強いか弱いかについては、歴史以外の別の要因が大きく影響するのではないでしょうか、僕はそう思います。
あ、歴史が全く影響しないのではないと思います。
多少の影響を及ぼすと思いますけど、あくまで間接的な影響であり、直接的なものがあると思うんですよねぇ。
それは〇〇だ!と、明確に言う自信はありません(笑)
おそらく、サッカーに対する価値観、サッカーに対する社会環境・・・というようなものだと思うんですけどねぇ。
ブラジル社会で生活するブラジル人にとってのサッカー、
イギリス社会で生活するイギリス人にとってのサッカー、
日本社会で生活する日本人にとっての野球(笑)、っていうのは、
同じものではないと思います。
これらの違いが、その社会でのサッカーになり、そのサッカーが繰り返されることでサッカーの歴史となるんだろうと思います。
うまく言えませんが。
イングランドでプロのサッカーが始まったのは1880年代のこと、
これをモデルにして欧州各国でサッカーのプロリーグが始まっていくんです。
日本のプロサッカーは1991年のJリーグからですので、欧州に比べ約100年遅いことになります。
なぜ、日本はプロのサッカーがもっと早くできなかったんでしょうか。
ちなみに、日本のプロ野球が始まったのは1936年(昭和11年)で、
欧州のプロサッカーと比較すると、スペインリーグやフランスリーグが始まった頃とほぼ同じです。
なぜ、日本の野球はプロ化して、そのころ日本のサッカーはプロ化しなかったんでしょうか。
ここら辺が価値観とか社会環境とかいうものの違いだと思うんです。
つまり、サッカーの実績や歴史が作られるのも、
個人や社会の価値観や社会環境が大きく影響していて、
この違いがサッカー界の強い、弱いに影響しているだと思っています(←思いっきり私見です)。
まとめ
以上、今回は日本のサッカーは歴史が浅いのかどうか、また、歴史が浅いとサッカーが弱いのかということを考えてみました。
日本のサッカーは100年の歴史があって、歴史が浅いということはないですよ。
歴史という視点で考えれば、プロのサッカーの歴史が浅いんであって、
歴史の浅さがサッカーの強い弱いに関係するのであれば、
プロのサッカーの歴史が深いか浅いかが影響するのではないでしょうか。
でも、プロ化しなかったことも、日本サッカーの歴史です。
プロのサッカーのことを考えると歴史が浅いのかもしれません。
ここのところの日本代表は、昔に比べ強くなりましたけど、ワールドカップで優勝はおろか、ベスト8にも進出したことがない強豪とは言えないチームです。
歴史はそれなりにあるんだけど、あんまり強くないと言えるのではないでしょうか。
そんな我らが日本のサッカーですけど、アマチュアの時代のサッカーから現在のサッカーに至るまで歴史を刻んできたことはは、少なからず僕らの誇りです(笑)
これからも、そんな日本サッカーを応援していく所存です。
全くもって個人的思考で語らせていただきましたが、今回の記事が、読んでくださった皆様のサッカーの楽しみのお役に立てればうれしく思います。
よかったら過去記事の<<何番が好き?人気の背番号について語ります【サッカー】>>もご一読ください。