サッカーのポジションは色々な言語が混ざり合って表現されているので、ちょっと分かりづらいですよね。
そのわかりづらいポジションのひとつが「ボランチ」。
ボランチというポジション名を使うのを辞めようという専門家もいるようですが、
今回はこのボランチについて、意味と役割を明確にしたいと思います。
正確に覚えると、さらにサッカーに詳しくなりますよ!
目次
ボランチの意味
ボランチ(volante)というポジション名は、ブラジルで使われているサッカー用語で、MFのうち守備的MFを指します。
また、ボランチとは「ハンドル」を意味しますので、
サッカーでは「操る」「操縦する」という役割を示しています。
つまり、サッカーのポジションのうち、MFの中央で位置でチームを操縦する役割の選手をボランチと言います。
フォーメーションでボランチの位置を確認してみましょう。
再度確認しておきますが、
- ボランチの意味:ハンドル(操縦する人)
- ボランチの場所:MF陣の中央&最後方
↑です。
ボランチの役割
ボランチの役割は、チームの戦術やシステム、配置される人数によって細かく違ってきますが、どのタイプのボランチにも共通することは、
- バイタルエリア付近、DFラインの前での守備
- DFとの連係による守備態勢の形成(カバーリング)
- ボール奪取直後からの攻撃の組み立て
↑が、主な役割です。
バイタルエリアとは、得点に繋がりやすいプレーが起こるエリアのことで、ボランチがポジショニングをとる位置にあたります。
このエリアでボール奪取や相手のプレーを邪魔する、チャンスの芽を摘むことなどの守備がボランチの役割のひとつです。
また、SBのオーバーラップ、FKなどでのCBの前線参加のときに、その空いたポジションをカバーして守備の態勢を形成することもボランチの役割のひとつ。
攻撃においては、守備によってボールを奪取した直後から、パスを中心に攻撃の組み立てる(「ビルドアップ」と言います)ことがボランチの役割です。
もちろん、これら3つの役割は、戦術等によって変化していきますし、比重も変わりますが、
ボランチは、この3つが大きな役割です。
ボランチのタイプ
そもそもボランチとは、ブラジル(ポルトガル語圏)のサッカー用語が日本で使われるようになったとのことで、ブラジルと日本以外では通用しないそうです。
ボランチに該当するポジションは各国にあり、呼び方が異なり、役割も細分化されていたりします。
世界各国のボランチのポジション名と役割を確認してみましょう。
イングランド
イングランドでは、ボランチが「ディフェンシブ・ミッドフィルダー(Defensive Midfielder)」に該当します。
そのタイプは以下のとおりです。
オールアクション・ミッドフィルダー(all action midfielder)
セントラル・ミッドフィルダーのうち攻撃、守備の両方のプレーを均等に行う役割のオールラウンドなMF。
イングランドらしいミッドフォルダーで、ジェラードやランパードなど代表的な選手です。
アンカー(Anchor)
言葉自体の意味は「船の錨」で、サッカーでは「安定させる人」という役割を指します。
日本サッカーでも時々使われますが、中盤の最後尾に位置し、CBと連携しながら守備をする役割のポジション。
海外の有名な選手でいうと、クロード・マケレレ、セルヒオ・ブスケツなどが該当します。
スペイン
スペインではボランチを「ピボーテ(pivote)」と言い「軸」を意味します。
その分類は以下のとおりです。
ピボーテ・セグンド(pivote segundo)
二番目のピボーテということでしょう。
イングランドのオールアクションMFと同じで、攻撃にも守備にも関わるオールラウンドな役割を担います。
フェルナンド・レドンド、ルイス・ガルシアあたりが該当すると思います。
ピボーテ・ディフェンシーボ(pivote defensivo)
守備的なピボーテということで、イングランドのアンカーと同じです。
中盤の底でボール奪取やバイタルエリアの守備を行います。
やはり、マケレレやブスケツが該当します。
ピボーテ・オルガニサドール(pivote organizador)
組織するピボーテということでしょう、司令塔型のボランチだということですね。
守備よりも攻撃の組み立てを行うことの比重が大きい役割です。
正確な長短のパスがプレーの特徴になります。
アンドレア・ピルロ、シャビなどがこれに該当します。
イタリア
イタリアではボランチが「メディアーノ(mediano)」と言い、「真ん中の人」という意味です。
その分類は以下のとおりです。
インクルソーレ(incursore)
「襲撃者」という意味で、イングランドのオールアクションMF、スペインのピボーテ・セグンドと同じ攻撃も守備も担当するオールラウンドの役割を担います。
ネドベド、デ・ロッシなどが該当します。
インコントリスタ(incontrista)
「ぶつかる人」「阻止する人」という意味で、イングランドのアンカー、スペインのピボーテ・ディフェンシーボと同じ。
イタリアのぶつかる人と言えばガットゥーゾ!ですね。
レジスタ(regista)
日本でもおなじみのレジスタは「演出家」という意味です。
司令塔型のボランチで、スペインのピボーテ・オルガニサドールと同じです。
レジスタと言えばピルロ、日本では遠藤ヤットが該当しますね。
日本で使われているボランチ(守備的MF)は、いくつかのタイプに分かれ、
そのタイプが、国によって名称が異なるということになります。
例としてイングランド、スペイン、イタリアとボランチに該当するポジション、また、その意味と細分化された役割を紹介しました。
以下、ボランチのタイプごとに、各国での名称を確認してみましょう。
ドイツ語やフランス語を加えてまとめてみます。
攻撃的ボランチ(万能型ボランチ)
- オールアクションMF(イングランド)
- ピボーテ・セグンド(スペイン)
- インクルソーレ(イタリア)
- アッハター(ドイツ)※意味「8番」
- アルセルール(フランス)※意味「執拗に攻撃する」
↑とのこと。
繰り返しますが、ボランチとは守備的MFのことですが、
そのボランチのタイプに、特に攻撃に参加する役割のボランチということになります。
サッカーの試合で、ボランチの選手なのに、よく前線に駆け上がり攻撃参加するようなタイプというニュアンスです。
歴代の日本代表で言えば、伊東輝悦や稲本潤一などがこのタイプです。
守備的ボランチ
- アンカー(イングランド)
- ピボーテ・ディフェンシーボ(スペイン)
- インコントリスタ(イタリア)
- ツェアシュテーラー(ドイツ)※意味「邪魔する人」
- レクペラトゥール(フランス)※「回収業者」
↑ボランチの中でも、特に守備を専門に行うボランチのタイプです。
前線に上がり攻撃参加することはほとんどなく、DFラインの前で、特に守備を行います。
歴代の日本代表で言うと、戸田和幸、福西嵩史、阿部勇樹、今野泰幸などが該当します。
この守備的ボランチのタイプの選手は、その守備力から、CBを任されることもよくあります。
今野泰幸なんかは、日本代表でもボランチやCBで試合に出場していましたよね。
司令塔型ボランチ
- ピボーテ・オルガニサドール(スペイン)
- レジスタ(イタリア)
- ゼクサー(ドイツ)※意味「6番目の人」
↑司令塔型のボランチは、このような呼び名です。
イタリアの「レジスタ」は、日本でも定着していますので、イメージしやすいかと。
MFのうち守備的な役割を担うのがボランチで、
このボランチのうち、攻撃型ボランチと守備型ボランチは、担当するエリアで直接的守備をしますけど、
この司令塔型のボランチというのは、(おもしろいことに)意外と直接的な守備をしません(笑)
あ!決して守備を全くしないということではないんですが、
相手とぶつかったり、直接ボールを奪うという役割ではなく、
味方選手が奪いやすい、若しくは、奪った後にボールを保持することで、守備を行うという役割のボランチです。
この司令塔型ボランチの特徴は、味方がボールを奪った後からで、
そのボールを受け、攻撃の組み立て(ビルドアップ)を始めるというタイプのボランチなんですねぇ。
歴代の日本代表でいうと、遠藤ヤットや柴崎岳などがこのタイプのボランチになります。
このように、日本で言うところのボランチはというポジション名は、各国で違いますし、その呼び名の意味も違いますが、
呼び名が違うだけで、タイプは3種類に分類されることになります。
まとめ
以上、今回は、サッカーのポジションのひとつ「ボランチ」の意味と役割を紹介しました。
ボランチとは主に守備的MFのことで、意味は「ハンドル/操縦する人」。
その役割は、
- 中盤での守備
- カバーリングによる態勢の形成
- 攻撃の組み立て
で、この3つがボランチというポジションの大きな役割です。
また、各国のポジション名とその意味を確認したことからもわかるように、
ボランチというポジションは攻撃/万能型、守備型、司令塔型に分類でき、
戦術や人数などにより役割が細分化されるということになります。
この記事を読んでくださった皆さんが「分かった!」となればうれしいです。
よかったらサッカーのポジション関連記事の以下もご参照ください。
→サッカーがよくわかる「ポジションと役割」について解説します
最後まで読んでいただきありがとうございます。